江戸時代の印刷事情。木版印刷による出版物と浮世絵。
世界三大発明といえば、羅針盤、火薬、活版印刷です。
いずれも中国起源のものが改良、実用化されたものです。
活版印刷は15世紀に発明され、普及していきました。
日本に入ってきたのは16世紀頃ですが、当時の日本で活版印刷は普及しなかったようです。
江戸時代の日本の印刷事情
日本の印刷技術が発展したのは、江戸時代からだと言われています。
活版印刷は16世紀に日本に入ってきましたが、ひらがな、カタカナ、漢字という日本語の文字数の多さや、続けて文字を書く草書で書かれることが多く文字を独立させることが困難であったことから、なかなか普及しませんでした。
江戸時代に普及していた印刷方法は、木版印刷でした。
木版印刷は文字通り木の板に文字や絵などを掘り、インクを載せて紙を押し当てて印刷するという方法です。
早い話が、小学校の図画工作でやった木版画ですね。
江戸時代では商業がさかんになり、商売をするのに「読み・書き・そろばん」が必要となってきました。
当時は寺子屋などの教育環境があったおかげで、庶民にも「よみ・かき・そろばん」が普及しており、識字率は6割を超えていたということです。
このような背景もあり、江戸時代ではすでに出版物が出回っていました。
「東海道中久栗毛」のような本や浮世絵のほか、かわら版も木版により印刷・出版されていました。
庶民でも本屋さんや貸本屋さんを利用し、娯楽のための本を楽しんでいたようです。
江戸時代で普及していた木版印刷
三代将軍家光の時代では、木版印刷による出版社や書店などが発達し、浮世絵や浮世草子、俳書、浄瑠璃などが刊行され、多くの書物が流通しました。
武士の学問向けの書や、洒落本、人情本、滑稽本といった書物も刊行されました。
世界トップクラスの印刷技術で作られた浮世絵
江戸時代では、浮世絵の技術が発達したことで、多色刷りの本も流通していました。
浮世絵は多色刷りの木版印刷なので量産品というイメージがあるかもしれませんが、美術品としての価値が高い物も多く存在します。
浮世絵の印刷は、印刷の元になる絵を作る絵師の他、木版印刷の元になる版を彫る職人、版に着色をして絵を刷る職人の3人による共同作業で行います。
職人にスポットが当たることはなかったようですが、浮世絵は職人の印刷技術の高さがなければ成立しませんでした。
こうして作られた浮世絵は、印象派の画家たちにも影響を与え、ジャポニズムブームによって多くの浮世絵が海外へ流出しました。
海外で高い評価を得た浮世絵ですが、浮世絵が海外へ流出したのは、日本からの輸入品の梱包材に浮世絵が使用されていたことによるようです。
この梱包材の浮世絵は、当時の日本では考えられないほどの高値で取引されていたようです。
世界で高い評価を得たアート作品が梱包材とは、びっくりですね。
江戸時代以降の日本の印刷
日本で活版印刷が使われだしたのは明治時代からでした。
1900年代に入ってからオフセット機が日本に伝えられました。
第二次大戦後には、印刷、製版、インクにおいても新技術が生まれ、紙以外の材料にも印刷できるようになるなど、目まぐるしく発展していきました。